「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」という名前で問題になったタイプの詐欺事件は、いまだに多くの被害者を生み出し続けています。こうした事件には、犯罪組織や詐欺事件について深く考えないまま若者が関わってしまい、逮捕・起訴されるケースも多くみられます。今回は、本人がそのような「特殊詐欺」事件に関わってしまった場合に、ご家族や親族(父母・兄弟姉妹・祖父母・叔父叔母など)が負う責任や、ご家族が取るべき対応についてご説明します。
この記事は弁護士酒田芳人が執筆しています。
特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で家族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させたりする犯罪のことです。
以下のページで、特殊詐欺とは何かについて、詳しくご説明しています。
特殊詐欺事件も通常の刑事事件の一つですので、大まかな流れは他の刑事事件と特に変わりません。
特徴の一つを挙げると、受け子や出し子と呼ばれる特殊詐欺組織の末端で関与した場合、被害者宅へ現金やキャッシュカードを受け取りに行った際、あるいは、ATMなどで現金を引き出しに行った際などに、現行犯逮捕されるケースが多くみられることでしょうか。
子どもが特殊詐欺に関わってしまい、金銭を詐取するなどして被害者の方々に被害を与えた場合、本人は刑事罰だけではなく、被害者の方々に対しても不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります。
しかし、本人が成人している場合、原則として、家族や親族(親・兄弟姉妹・祖父母など)が損害賠償責任を負うことはありません。
しかし、本人が未成年の場合、親が代わって損害賠償責任を負うことがあります。
民法は、本人に責任能力がなくその責任を負わない場合において、法定の義務を負う者は第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めているからです(民法714条1項本文)。
このとき、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでないとされていますが(民法714条1項ただし書)、責任を免れるためには、親の側がこれらを立証する責任を負うことになります。
他方で、刑事事件に関して言えば、家族が本人と共に特殊詐欺を行ったり、家族が本人を犯罪組織に紹介(リクルート)したりしたような場合でなければ、通常、家族が刑事事件の責任を負うことはありません。
この点は、本人が成人であっても未成年であっても同様です。
ただし、本人が未成年である場合、少年事件として取り扱われることとなり、成人を対象とした刑事事件とは異なる進み方をすることがあるので注意が必要です。
北千住パブリック法律事務所では、少年事件も含めた刑事事件全般について豊富な経験がありますので、早い段階で今後の見通しを立てるためにも、お問い合わせください。
捜査機関が本人に対する取調べ等を行った後、検察官が証拠十分であると判断した場合、刑事事件として起訴されて刑事裁判となるケースが多いと考えられます。
仮に、本人が特殊詐欺に関わったことに争いがなく、罪を認めるのであれば、刑事裁判では主に量刑の点が問題となります。
量刑とは、刑事裁判の被告人に対して、どれくらいの重さの刑罰を科するのが良いか裁判所が判断することです。
この時、量刑を決めるにあたって一番重要なのは、本人が行った犯罪行為自体の重さですが、本人に科される刑罰を軽くしたいと考える場合、家族の協力により、本人にとって有利になる事情を主張することもできます。
最も大きな点は、被害者の方々と示談をすることです。
さきにお伝えした通り、本人が成人である場合、家族の方が本人に代わって民事上の損害賠償責任を負うことはありません。
しかし、本人が被害者の方々に対して負っている民事上の損害賠償責任を家族が代わりに果たすことができれば、事件によって生じた被害が回復されたことになりますので、その分だけ本人に対する量刑が軽くなることになります。
具体的には、家族が被害者に対する賠償金を準備し、示談交渉を行い、無事に示談が成立すれば、本人にとって非常に有利な事情となります。
通常、検察官は弁護人に対してしか被害者の連絡先を開示しませんので、スムーズに示談交渉を行うという観点からも、ぜひ北千住パブリック法律事務所へのご相談・ご依頼をご検討ください。
その他には、本人との面会や手紙のやりとりを通じて、本人の反省を促すことも考えられます。
特に、初めて刑事事件によって逮捕・勾留され、身柄を拘束されてしまった本人にとっては、家族とのやりとりは大きな心の支えとなります。
家族とのやりとりを通じて、自分が関わってしまった犯罪の大きさを自覚し、事件や被害者に対する反省の気持ちを深めると共に、今後は二度とそのようなことをしないと心に強く誓うようになるのは、決して珍しいことではありません。
ただし、特殊詐欺事件は犯罪組織との繋がりが強く疑われるため、家族も含めて弁護士以外との面会や手紙のやりとりなどが禁止されているのが通常です(これは「接見等禁止処分」と呼ばれるもので、一般に「接見禁止」とも呼ばれます)。そのため、弁護士と協力した上で、本人との面会や手紙のやりとりを認めてもらえるよう、裁判所の手続きを進める必要があります。
また、本人に対する刑事裁判が終わった後の更生環境を整えるということも重要です。
家族が本人と同居し、本人の生活状況や人間関係を見守ることは、本人が2度と犯罪を行わないようにするための一つの助けになります。
また、学業や、定まった職業に就くことは、本人の安定した生活につながることから、やはり本人を犯罪から遠ざけることになりますので、こうした環境を整えるためにサポートすることも重要です。
これまでお伝えした通り、本人が特殊詐欺の事件で逮捕されてしまった場合であっても、家族が本人のためにできることはいくつもあります。
接見等禁止処分が付された本人との間で面会や手紙のやりとりを行い、家族から本人のために様々な働き掛けをしていただくためには、弁護士による協力が必要不可欠です。
もちろん、国選弁護人であったとしても、本人のために最善を尽くすことに違いはありません。
しかし、家族の方々の目線で、最善と思われる弁護士を選び、弁護士との間で強い信頼関係を築き、本人のために様々な協力を行っていただくことができれば、本人にとってより有利な解決をもたらす可能性が高くなるのではないでしょうか。
北千住パブリック法律事務所では、国選事件・私選事件を問わず、多くの特殊詐欺案件を手掛けてきました。
もちろん、その中には特殊詐欺の「受け子」・「出し子」に関する事件も多く含まれており、ご家族の方々からの信頼を得ながら、有利な解決をもたらしたものも多数あります。
ご家族が特殊詐欺に関わってしまい、警察の捜査を受けているのであれば、是非、ご家族の立場で、北千住パブリック法律事務所までご相談ください。
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