特殊詐欺(振り込め詐欺・オレオレ詐欺)の受け子・出し子として逮捕されたらどうなる?

特殊詐欺(振り込め詐欺・オレオレ詐欺)の受け子・出し子として逮捕されたらどうなる?

「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」という名前で問題になったタイプの詐欺事件は、いまだに多くの被害者を生み出し続けています。
こうした事件には、犯罪組織や詐欺事件について深く考えないまま若者が関わってしまい、逮捕・起訴されるケースも多くみられます。今回は、そうした「特殊詐欺」事件についてご説明します。

この記事は弁護士酒田芳人が執筆しています。

目次

1 特殊詐欺とは?

(1)特殊詐欺の定義
(2)警視庁による特殊詐欺の定義と特殊詐欺の10パターン

2 若者が特殊詐欺の受け子・出し子として安易に関与する例が後を絶たない

(1)殊詐欺の典型的な例=受け子・出し子
(2)今も続く特殊詐欺の被害
(3)「闇バイト」「裏バイト」などに安易に関与してしまう若者

3 特殊詐欺に対する警察等の対応・対策

(1)特殊詐欺に対する全国の都道府県警察の取り組み
(2)特殊詐欺に対する警視庁の取り組み

4 特殊詐欺の受け子・出し子として捕まるとどうなるの?

(1)法務省の「犯罪白書」によると、多くのケースで2年以上の実刑判決が下されている
(2)ケースによっては執行猶予を得られるものも存在する
(3)これから「受け子」や「出し子」に関わろうとしている人へ

5 特殊詐欺の受け子・出し子に関する相談・依頼は北千住パブリックへ

1 特殊詐欺とは?

(1)特殊詐欺の定義

特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させたりする犯罪のことです。

警視庁 特殊詐欺とは
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/furikome/furikome.html

(2)警視庁による特殊詐欺の定義と特殊詐欺の10パターン

警視庁では、特殊詐欺を以下に記載した10の類型に分類しています。

・オレオレ詐欺
・預貯金詐欺
・架空料金請求詐欺
・還付金詐欺
・融資保証金詐欺
・金融商品詐欺
・ギャンブル詐欺
・交際あっせん詐欺
・その他の特殊詐欺
・キャッシュカード詐欺盗(窃盗)

2 若者が特殊詐欺の受け子・出し子として安易に関与する例が後を絶たない

(1)特殊詐欺の典型的な例=受け子・出し子

特殊詐欺に関与してしまう典型的な例は、
・「オレオレ詐欺」、「預貯金詐欺」、「キャッシュカード詐欺盗」などの方法により、被害者からキャッシュカードを騙し取るもの(受け子)
・「還付金詐欺」、「金融商品詐欺」などの方法により、被害者から送金された被害金を引き出すもの(出し子)
などです。

(2)今も続く特殊詐欺の被害

特殊詐欺は、2000年前後から増え始めたと言われていますが、いまだに被害は後を断ちません。
2021年1月から12月までの認知件数合計は14,461件、合計被害額は278億959万7000円に上るとされています。

警視庁・SOS47 特殊詐欺 発生状況
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/circumstances/

(3)「闇バイト」、「裏バイト」などに安易に関与してしまう若者

こうした被害が続くのは、今もなお特殊詐欺に関与する組織が活発に活動しているからです。
そうした組織は、インターネット上の匿名掲示板やSNSなどを通じて、「闇バイト」、「裏バイト」といった名称で、ラクにお金を稼ぎたい若者たちをリクルートし続けているという実態があります。
特殊詐欺に関与する組織は、「受け子」や「出し子」が逮捕勾留される可能性が高いことから、常に新たな人材を必要としているからです。
組織にとって、「受け子」や「出し子」は、逮捕勾留されるたびに切り捨てて新たに別の人材を雇い入れる、いわば「使い捨て」のような存在だとも言えます。

3 特殊詐欺に対する警察等の対応・対策

(1)特殊詐欺に対する全国の都道府県警察の取り組み

特殊詐欺による被害が後を絶たないことから、警視庁をはじめとして全国の都道府県警察では、特殊詐欺対策ページを設けるなどして、情報発信に努めています。

各都道府県警察の特殊詐欺対策ページ
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/link/

(2)特殊詐欺に対する警視庁の取り組み

その他にも、例えば警視庁では、「特殊詐欺根絶アクションプログラム・東京」を実施しており、eラーニング動画の公開、ダウンロード用の各種ポスターの公開、参加企業の取り組みの紹介、メールでの特殊詐欺事件発生情報の共有、などの取り組みを行っています。

特殊詐欺根絶アクションプログラム・東京
https://action.digipolice.jp

このように、全国の都道府県警察をはじめとして、特殊詐欺を根絶するための取り組みはより一層強化されており、特殊詐欺に関わった「受け子」や「出し子」が摘発される可能性は、これまで以上により高くなっていると言えます。

4 特殊詐欺の受け子・出し子として捕まるとどうなるの?

(1)法務省の「犯罪白書」によると、多くのケースで2年以上の実刑判決が下されている

一般的に、「受け子」や「出し子」を含めた特殊詐欺に関わった場合、組織の末端に属しているだけであっても、有罪となった場合には重い刑罰が科されることになります。

法務省の作成している令和3年(2021年)版の犯罪白書では、詐欺に関する事件を特別に取り上げて特集しています。
この中で分析の対象とされた「受け子」や「出し子」として起訴されたケースの半数は、事件としては1件しか関与していなかったにもかかわらず、うち55%が実刑となり、大半が2年以上の懲役刑であったとされています。

令和3年版犯罪白書-詐欺事犯者の実態と処遇-
https://www.moj.go.jp/content/001365737.pdf

(2)ケースによっては執行猶予を得られるものも存在する

他方で、「受け子」や「出し子」は、特殊詐欺に関与した組織の中では末端に位置することが多く、また、アルバイト感覚で気軽に参加するケースも多く見られます。
ケースによっては、執行猶予を勝ち取ることのできるケースも、もちろん存在します。

一例を挙げれば、
・被害に至らず未遂にとどまっている
・被害額が相対的に少ない
・関与した件数や起訴された件数が少ない
・自己資金や親族等の援助によって示談が成立している
・本人が罪を認めて反省の態度を示している
・前科前歴がない
といったようなケースでは、執行猶予が付されたり、あるいは実刑判決であっても短い刑期が科される例も見られます。

(3)これから「受け子」や「出し子」に関わろうとしている人へ

しかし、当然ながら、執行猶予になるケースがあり得るからと言って、「受け子」や「出し子」をやってもいいということにはなりません。
もし、あなたが、アルバイトのような感覚で、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」といった「闇バイト」や「裏バイト」に関わろうとしているなら、直ちにやめるべきでしょう。
詐欺によって被害を受けて苦しむ被害者が存在するから、というのはもちろんです。
それだけでなく、全国の都道府県警察による取り組みや、裁判所が重い判決を下している傾向を考えれば、リスクとリターンが見合わないから、ということも挙げられます。
また、仮に、不起訴処分や執行猶予判決が得られるとしても、学生なら退学、会社員なら懲戒解雇、既婚者なら別居や離婚など、刑事手続以外の不利益が存在することも決して無視できません。

5 特殊詐欺の受け子・出し子に関する相談・依頼は北千住パブリックへ

いまだに大きな社会問題とされている特殊詐欺の事件で逮捕された場合、不起訴処分を獲得したり、無罪判決または執行猶予判決を獲得したりするためには、経験のある弁護士による十分な弁護活動が必要です。

具体的には、例えば、
・接見等を通じて逮捕勾留された被疑者にできる限り正確な見通しを伝えて弁護士との間で強い信頼関係を構築する
・捜査機関の提出した証拠を丁寧に分析し刑の重さに影響を与える証拠を見極める
・被告人のケースセオリーを裏付ける事実を調査する、被害者との示談交渉により示談書を獲得するなど、積極的な立証を行う
といった弁護活動です。

北千住パブリック法律事務所では、国選事件・私選事件を問わず、多くの特殊詐欺案件を手掛けてきました。
もちろん、その中には多くの「受け子」・「出し子」に関する事件が含まれており、無事に執行猶予を得ることのできた判決も多数あります。
あなたや、あなたの身近な人が特殊詐欺に関わってしまい、警察の捜査を受けているのであれば、是非、北千住パブリック法律事務所までご相談ください。

初めてご相談される方へ
https://www.kp-law.jp/introduction/index.html

酒田 芳人 弁護士

京都大学法学部卒業
早稲田大学大学院法務研究科修了
2011年弁護士登録

<趣味>

<座右の銘>

<一言>

どのような案件・分野であっても、ご相談・ご依頼の内容自体に強い関心を持ち、最も良い解決をするにはどのような選択肢があり得るのか、前向きにご相談者・ご依頼者と一緒に考えます。