傷害罪・傷害致死罪

傷害罪・傷害致死罪

目次

1 傷害罪とは

2 刑事事件の流れ

3 弁護士に依頼すると

4 依頼の流れ

5 傷害致死罪

1 傷害罪とは

傷害罪(刑法204条)は,わざと(「故意に」と言います。)人に怪我を負わせてしまったという犯罪です。人を殴ったり,蹴ったりして打撲傷ができてしまったような場合です。

人を殴ったり蹴ったりしても怪我にならなかったときは,傷害罪にはなりませんが,暴行罪(刑法208条)という別の犯罪が成立します。

例えば,お酒を飲んで酔っ払ったときに,近くにいた人とトラブルになり,ついカッとなって突き飛ばしてしまったという場合には,相手が打撲などの怪我を負えば傷害罪が成立し,怪我を負わなければ暴行罪が成立します。

 また,ケンカのように相手から殴ってきた場合にも,自分の身を守るだけでなく,必要以上に反撃してしまったときには,傷害罪や暴行罪が成立して罪を問われる可能性があります。

 このように,傷害罪や暴行罪は,とても身近な犯罪であり,日ごろ気を付けていても巻き込まれてしまう可能性のある犯罪です。

傷害罪を犯すと,15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があり,暴行罪も,2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料が科される可能性があります。このように,傷害罪や暴行罪は,身近な犯罪であるにもかかわらず,刑務所に入らなければならなくなる可能性がある重い犯罪なのです。

2 刑事事件の流れ

 人を殴って傷つけてしまった場合,警察から話を聞かれます(事情聴取)。そして,殴ってしまった相手(被害者)が被害届を警察に提出したり,被害者の怪我が重症だったりしたときには,そのまま逮捕・勾留されてしまいます。

逮捕・勾留されると,最大23日間は警察署の外に出られず,家にも帰ることはできません。携帯電話も取り上げられ,家族に連絡することもできません。

そして,逮捕・勾留の間になされた捜査の結果,刑罰を科すことが相当と検察官が判断すれば,起訴されて裁判を受けることになり,裁判で懲役刑や罰金刑が科されてしまいます。

3 弁護士に依頼すると

 傷害罪や暴行罪を犯してしまった場合,必ず裁判となり刑罰を受けるわけではありません。適切なタイミングに必要なことをすれば,逮捕されずに済んだり,起訴されずに済んだりします。しかし,いつ何をすればいいのかは,専門家である弁護士でなければ判断できません。

⑴ 被害者との示談

 傷害罪や暴行罪は,被害者がいる犯罪です。被害者のいる犯罪では,被害者と示談して,被害弁償をし,刑事処罰を求めないと被害者に言ってもらうことが重要です。しかし,被害者と直接連絡を取ろうとしても断られるかもしれませんし,そもそも逮捕・勾留されていて,被害者に連絡を取れない状況かもしれません。

 このような時は,弁護士に依頼して,被害者と示談の交渉をしてもらわなければなりません。被害者と示談ができれば,示談書を作成し,検察官や裁判所へ提出して,不起訴を求めたり,減刑を求めたりすることになります。

⑵ 身体拘束からの解放

 傷害罪や暴行罪を犯してしまうと,逮捕・勾留される可能性があります。逮捕・勾留されてしまうと,家に帰ることもできませんし,会社に行くこともできません。そうなれば,会社に事件のことを話さなければならなかったり,無断欠勤しなければならなくなったりするため,その結果,解雇されてしまうことも少なくありません。そのため,逮捕・勾留されてしまった場合には,直ちに釈放に向けた活動が重要です。

⑶ 取調べへの対応

傷害をしたと疑われた場合、警察官や検察官から事情を聞かれ(取調べ)、話した内容は供述調書という書類にまとめられます。この供述調書は、後に裁判で証拠となります。

警察官や検察官は、事件を捜査して起訴することが仕事で、「犯人は絶対に逃がさない」という考えです。そのため、取調べでは、なんとか罪を認めさせようとしてきます。いくら犯人ではないと言っても、信じてくれません。そして、辛い取調べから逃れるために一度罪を認めてしまうと、後でこれを覆すことは出来ません。

弁護士に依頼をすれば、取調べでどのように対応すれば良いかアドバイスを受けられます。また、不当な取調べがなされた時には、抗議もします。これにより、裁判で不利になる供述調書を作らせないようにできます。

4 依頼の流れ

ご自身やご家族が傷害罪を疑われてしまったら、すぐに弁護士にご相談下さい。

状況を確認した上で、アドバイスを行います。すでに本人が逮捕されてしまっている場合には、すぐに会いに行きます(弁護士が警察署などで本人と会うことを「接見」と言います。)。

直接話を伺った上で、弁護士に依頼をご希望される場合には、委任契約を結ばせていただきます。

逮捕・勾留されてしまうと、生活への影響が出てしまいます。そのため、なるべく早い時期に弁護士に繋がることが重要です。

5 傷害致死罪 

1 傷害致死罪とは

 傷害罪の発展的な犯罪として,傷害致死罪というものがあります(刑法205条)。傷害致死罪は,人に怪我をさせた結果,その人を死亡させてしまった場合に成立します。 

 例えば,言い争いになった相手を突き飛ばし,相手が倒れたときに頭を打ってしまったため病院に搬送されたが,打ち所が悪くて死亡してしまったような場合に,傷害致死罪が成立します。 

 傷害致死罪の法定刑は,3年以上の懲役刑とされています。法律上は,懲役3年までであれば執行猶予を付けることができますので,有罪の判決が出てしまったとしても,刑務所に行かなくても済む可能性はあります。しかし,人が亡くなっているという結果は重く捉えられるため,その可能性はとても低いものになっています。 

2 殺人罪と何が違うのか 

 傷害致死罪と殺人罪は,人が死亡しているという結果については同じです。 

しかし,殺人罪の法定刑は,死刑または無期もしくは5年以上の懲役と定められていて,傷害致死罪に比べるととても重いものとされています。 

この違いは,わざと(故意に)人を死亡させたか(これを「殺意」と言います),言い換えると,人を死亡させようと思って行動し,人を死亡させたのかという点で,傷害致死罪と殺人罪が区別されているからです。 

 この区別は簡単なようですが,裁判ではこの殺意の有無が問題になることが良くあります。なぜなら,人を死亡させようと思っていたか否かは,その人の頭の中のことであり,他人が頭の中をのぞくことができないからです。 

「人を死亡させようと思っていました。」,「最初から殺すつもりでした。」と自白している場合には大きな問題にはなりませんが,「死亡させようとは思っていませんでした。」,「まさか死んでしまうとは思っていませんでした。」と否認している場合には,検察官が,裁判で殺意があったことを証明しなければなりません。具体的には,凶器を使用したか,身体のどこを怪我させたのか,被告人と被害者の関係性,行為後に被告人がどのような行動をしたのかという視点から証明していくことになります。これに対して,弁護人は,被告人には殺意がなかったことを反論していくことになります。 

具体的なケースで,どのようなことを反論すれば殺意が否定されるのかということや,殺意が否定される可能性がどの程度あるのかということは,弁護士に個別にご相談ください。 

3 裁判員裁判対象事件になる 

 傷害致死罪で起訴されて,裁判を行う場合,裁判員裁判が開かれることになります。裁判員裁判は,一般市民が裁判員として裁判に参加して,裁判官とともに判決を出す制度です。 

 この裁判員裁判は,これまでの裁判官だけが行う裁判とは異なる点がいくつもあります。その一つは,裁判が連日で開かれて,裁判が始まってから判決までの期間が短くなることが多いという点です。そして,判決まで短期間で行われることから,裁判に提出された証拠を後でじっくり見返すことができません。そのため,裁判では,裁判官や裁判員がその場で証拠や主張を理解して判決を出せるよう,分かりやすくプレゼンや説明をする必要があります。 

 当事務所では,裁判員裁判対象事件を数多く扱っている弁護士が在籍しており,裁判員裁判のための研修を受けたり,その研修の講師を務めたりするなど,日々研鑽を積んでいます。 

 依頼者のために最善の弁護活動をする熱量と実力のある当事務所の弁護士に,ぜひともご相談・ご依頼ください。 

桑原 慶 弁護士

明治大学法学部卒業
中央大学法科大学院卒業
2016年弁護士登録

<趣味>

サッカー・漫画を読むこと

<座右の銘>

継続は力なり

<一言>

困っている人の力になりたいと思い、弁護士になりました。トラブルに巻き込まれてしまっても、その影響を最小限に抑え、これまで通りの生活が出来るよう尽力します。