罰金を支払えないと刑務所で労役することになるって本当!?

罰金を支払えないと刑務所で労役することになるって本当!?

罰金刑の有罪判決を受けてしまった方の中には、罰金を支払うだけの資力がない方もいます。
では、罰金を支払うことができない場合は、必ず刑務所に行かなくてはいけないのでしょうか。
今回は罰金の制度についてご説明します。

この記事は弁護士國府田豊が執筆しています。

目次

1 罰金刑とは?

2 罰金が払えない場合はどうなるの?

(1) 猶予や免除の制度はありません
(2) 納付しないと財産を差し押さえられます

3 労役場留置って何?

(1) 罰金の支払いが出来ない場合、労役場に留置されます
(2) 一般的に1日あたり5000円に換算されます
(2) 土日の作業はありません

4 罰金を支払わなくてもよい場合はあるの?

(1) 罰金刑でも執行猶予が付される場合があります
(2) 「満つるまで算入」されることがあります

5 反則金とは何が違うの?

(1) 反則金(はんそくきん)
(2) 過料(かりょう・あやまちりょう)
(3) 科料(かりょう・とがりょう)
(4) 追徴(ついちょう)

5 刑事事件のご相談はぜひ北パブに!

1 罰金刑とは?

罰金刑とは、日本の刑事裁判における有罪判決のうち、一定金額の支払いを命じられる刑罰のことを言います。
罰金刑も有罪判決ですから、前科がついてしまうことになります。

刑法第15条(罰金)
罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。

2 罰金が払えない場合はどうなるの?

⑴ 支払猶予や分割払いの制度はありません

基本的に、罰金の支払猶予や分割払いの制度はありません。
罰金も刑罰ですから、定められた期間内に「一括で」納付しなければなりません。

しかし、病気で働けない方など、やむを得ない理由のために、定められた機関内に一括で罰金の支払えない場合には、納付の通知をしている検察庁の「徴収事務担当者」に相談することで、支払猶予や分割払いが認められることがあります。

⑵ 納付しないと財産を差し押さえられます

罰金を支払わない場合、検察庁から督促状が届いたり、徴収担当者から連絡が来ることになります。
これらの督促や連絡にも応じなかった場合、財産に対して強制執行(差押え等)がされることになります。
罰金を支払わず、強制執行すべき財産もない場合には、労役場に留置されることになります。

3 労役場留置って何?

⑴ 罰金の支払いが出来なければ労役場に留置されます

労役場留置とは、罰金や科料を完納することが出来ない者に対して、判決で定められた日数分、労役場に留置して軽作業等を命じられることを言います。
罰金を支払えなかった人の労役場留置の期間は、1日以上2年以下です。

刑法第18条(労役場留置)

1 罰金を完納することができない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する。
2 科料を完納することができない者は、1日以上30日以下の期間、労役場に留置する。
3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、3年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、60日を超えることができない。
4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
5 罰金については裁判が確定した後30日以内、科料については裁判が確定した後10日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

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⑵ 一般的に1日あたり5000円に換算されます

労役場での留置は、一般的に1日あたり5000円に換算されます。
つまり、罰金30万円の場合は60日間、罰金50万円の場合は100日間、労役場に留置されることになります。
もっとも、実務上、罰金額が100万円以上の場合、1日あたり1万円以上に換算されています。

⑶ 土日の作業はありません

労役場での作業は、土日祝日は休みになります。
しかし、労役場で留置されている期間は土日祝日も含めて1日と換算されます。

4 罰金を支払わなくてもよい場合はあるの?

⑴ 罰金刑でも執行猶予が付される場合があります

極めて稀ですが、罰金刑でも執行猶予が付される場合があります。
刑法も、50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、執行猶予を付すことができることを定めています。

刑法第25条(刑の全部の執行猶予)

1 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

執行猶予については、下記の記事をご覧ください。

⑵ 「満つるまで算入」されることがあります

逮捕された後、釈放されることなく有罪判決に至った場合、身柄を拘束されていた期間(未決勾留日数)の一部が刑期に算入されることがあります。

未決勾留日数が刑期に算入されると、その日数分刑が執行されたものとみなされますので、その分支払うべき罰金の額が減ることになります。

【具体例】

Aさんは、スーパーでお弁当等を盗んで逮捕され、起訴されてしまいました。
家族も身寄りもおらず、生活保護を受給しており、手持ちの現金や預貯金はほとんどありません。
示談もすることができず、保釈も認められないまま、判決を迎えることになりました。

判決主文
「被告人を罰金30万円に処する。未決勾留日数のうち、その1日を金5000円に換算してその罰金額に満つるまでの分を、その刑に算入する。」

このような場合、Aさんは、本来であれば罰金30万円を支払う必要があります。
しかし、Aさんは逮捕されてから判決までずっと身柄を拘束されていましたので、未決勾留日数として60日が刑に算入されることになりました。
そうすると、1日あたり5000円と換算されますので、Aさんは5000円×60日=30万円を支払ったものと扱われます。
したがって、Aさんは罰金を支払うことなく、社会に復帰することができます。

窃盗罪については、こちらの記事をご覧ください。

5 反則金とは何が違うの?

罰金と似たような処分に、反則金や科料、過料があります。
それぞれお金の支払いを命じられる点では共通していますが、それぞれ異なる点があります。

⑴ 反則金(はんそくきん)

駐停車違反や信号無視、スピード違反などの一部の反則行為を行った場合、反則金を支払うことになります。
反則金は、「交通反則通告制度」という制度に基づき、比較的軽微な交通違反に対する行政処分として課されるものです。

反則金は行政罰ですので、刑罰ではありません。
したがって、反則金を支払うことになったとしても、前科はつきません。
交通違反等に関しては、こちらの記事をごらんください。

⑵ 過料(かりょう・あやまちりょう)

歩きたばこやごみのポイ捨てなど、条例に定められた違反行為を行った場合、過料を支払うことになります。

過料とは、行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すものです。
刑事事件の罰金とは異なり、過料に科せられた事実は前科にはなりません。

⑶の科料と同じ読み(かりょう)であることから、区別をするために過料を「あやまちりょう」と呼ぶことがあります。

⑶ 科料(かりょう・とがりょう)

科料とは、日本の刑事裁判における有罪判決のうち、一定金額の支払いを命じられる刑罰のことを言います。
この点は罰金刑と同じですが、科料は「1000円以上1万円未満」の金銭の支払いを命じられる点で、比較的軽い罪に対する刑罰といえます。

器物損壊罪や暴行罪、軽犯罪法違反等に過料がある罪が規定されています。
しかし、科料も有罪判決ですから、前科がついてしまうことになります。

⑵の過料と同じ読み(かりょう)であることから、区別をするために科料を「とがりょう」と呼ぶことがあります。


刑法第17条(科料)
科料は、千円以上一万円未満とする

器物損壊罪については、こちらの記事をご覧ください。

⑷ 追徴(ついちょう)

追徴とは、刑法上、犯罪行為により生じ、これにより得た物または犯罪行為の報酬として得たものや、その対価として得たものの全部または一部が没収できないときに、没収にかわって、その価額の納付を強制する処分のことをいいます(刑法19条の2)。

追徴は、犯罪行為により得た不正の利益を犯人から取り上げることを目的としています。
没収・追徴をすることになるか否かは、裁判官の裁量によりますが、賄賂の事件の場合には、必ず没収・追徴がされることとされています(刑法197条の5等)。

追徴は、有罪判決の場合に単独でつくものではないので、追徴のみをもって前科となることはありません。
しかし、追徴がされる場合には、他の刑が科せられていますので、全体として前科がつくことになります。

刑法第19条(没収)
1 次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

刑法第19条の2(追徴)
前条第1項第3号又は第4号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。

これらの制度をまとめるとこのようになります。

反則金過料 科料罰金追徴
性質行政罰刑事罰(刑事罰に準ずるもの)
金額制限なし 1000円以上1万円未満1万円以上定めなし(没収できなかったものの価額)
前科つかないつく 単独ではつかない

6 刑事事件のご相談はぜひ北パブに!

罰金を支払う可能性をゼロにするためには、何よりも不起訴処分を得ることが重要です。
弊所は、特に刑事事件に力を入れて活動しており、逮捕される前段階の事件のほか、逮捕されてしまった事件や裁判段階の事件について豊富な経験があります。
東京都内はもちろん、千葉・神奈川・埼玉などにも出張します。
お困りの際は、お一人で悩まず、ぜひ足立区の北千住パブリック法律事務所にご相談ください。
弁護士があなたやご家族の強い味方になります。

初めてご相談される方へ

https://www.kp-law.jp/introduction/index.html

國府田 豊 弁護士

早稲田大学大学院法務研究科修了
2021年弁護士登録

<趣味>

ボート、ドライブ、カラオケ、料理

<座右の銘>

熱く冷静に

<一言>

「困っている人の正義の味方になりたい。」そういう思いで弁護士になりました。他の誰がなんと言おうと、私はあなたの味方です。どんな些細なことでもご相談ください。