執行猶予について

目次

1 執行猶予にしてほしい

2 執行猶予制度とは

3 執行猶予となるために必要なこと

3 一部執行猶予とは

3 一部執行猶予が認められるためには

4 弊所にお任せください

1 執行猶予にしてほしい

  「起訴されてしまったけれど,刑務所に行きたくない。」 
  「執行猶予にしてほしい。」 

 通常であれば,刑務所に入りたいと思う人はいないでしょう。なんとしても刑務所に行くことは避けたいと思う人がほとんどだと思います。 
 刑務所に入ると,長期間社会から切り離されてしまいます。その間に,家族や仕事を失うことも珍しくありません。 

そのため,執行猶予となるか刑務所に入ることになるかは,人生にかかわります。 

2 執行猶予制度とは

 執行猶予制度は,有罪判決で言い渡された刑の執行を一定期間猶予して,再び犯罪をしてしまうことを防止するための政策的な制度です。 

 有罪判決であることには変わりがないので,執行猶予となっても前科となります。また,執行猶予期間中に新たに罪を犯してしまうと,執行猶予が取り消されてしまいます。そのため,執行猶予となって刑務所に入らずに済んだとしても,してしまった犯罪や裁判がなかったことにはなりません。 

 もっとも,判決後に刑務所に入らずに自宅に帰ることができ,執行猶予期間中に新たに罪を犯さなければ,一度も刑務所に入らずに済みます。前科が付くことを除けば,それまで通りの生活に戻ることができますので,執行猶予判決を獲得することは,大きなメリットになります。 

 なお,執行猶予制度の中には,全部執行猶予と一部執行猶予の二種類の制度があります。これまで説明したものは全部執行猶予制度です。一部執行猶予制度は,2016年6月1日から開始した比較的新しい制度です。詳しくは,下記で説明します。 

3 執行猶予となるために必要なこと

 執行猶予となるか否かは,法律が一定の要件を定めていますが,最終的には裁判官が判断します。その裁判官の判断には,一定の裁量があります。 

 裁判官の判断のポイントは,①犯罪の責任の大小,②示談や被害弁償の有無,③再犯の可能性,が考えられます。 

 そもそも,刑罰は,犯罪をしたことの責任として与えられるものですので,執行猶予を付けるか否かは,①犯罪の責任の大小が一番のポイントとなります。例えば,少額の商品を1回万引きしただけの窃盗罪の場合には,責任が小さく,執行猶予が付きやすいと言えます。反対に,被害者にけがを負わせてその結果死亡させてしまった傷害致死罪の場合には,責任が重く,執行猶予は付きにくいと言えます。 

 また,②被害弁償により犯罪の被害が回復している場合や,示談ができて被害者が許しているような場合には,相対的に犯罪の責任が小さくなったと言えるので,執行猶予が付きやすくなります。 

 さらに,裁判官は,再犯の可能性がどの程度あるかも重視しています。今回の事件の原因はどこにあってその原因に対処することができるのか,家族などの支えがあるか,福祉機関や更生支援機関から支援を受けられるのか,といった環境調整をしていく必要があります。 

4 一部執行猶予とは

 これまでは,刑の全ての執行を猶予する全部執行猶予制度を前提として説明してきました。これに対して,2016年6月1日から開始した「一部執行猶予制度」があります。

 一部執行猶6予制度は,簡単に言うと,字のごとく,刑の一部のみの執行を猶予するというものです。刑の全部の執行が猶予されるわけではないので,一定期間は刑務所に入らなければいけません。もっとも,一部は執行が猶予されるので,猶予される期間は社会に戻って生活することができます。刑務所に入らなければならない期間が短くなるという点は,一つのメリットと言えます。 

5 一部執行猶予が認められるためには

  一部執行猶予は,刑法27条の2~27条の7と,薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律で定められています。両者では,対象者や要件,保護観察を付けるか否かが異なります。 
⑴ 刑法上の一部執行猶予 
刑法上の一部執行猶予の対象は,以下の3つです(刑法27条の2)。 
①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者 
②前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても,その刑の全部の執行を猶予された者 
③前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者 

 また,一部執行猶予を認めてもらうためには,今回受ける判決で3年以下の懲役または禁錮となることが必要です。今回の判決でそれ以上のものになる場合には,一部執行猶予を付けることはできません。 

 さらに,上記に該当する場合に必ず一部執行猶予が認められるわけではありません。犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,再び犯罪をすることを防ぐために必要であり,かつ,相当であると認められる場合に初めて一部執行猶予が認められます。 

 そして,一部執行猶予が付けられる場合には,猶予期間は1年以上5年以下の期間とされており,この猶予期間には保護観察が付くことがあります。 
 ⑵ 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下,「薬物使用法」といいます)上の一部執行猶予 
 薬物使用法は,刑法の一部執行猶予に関する特則として定められた法律です。この薬物使用法は,薬物を使用する犯罪に関する一部執行猶予について,特別に規定しています。 

 薬物使用法上の一部執行猶予の対象は,大麻や覚醒剤等の薬物を使用等したものとされており,刑法の場合のように,前に禁固以上の刑に処せられたことなどがあったとしても対象となっています。このように,薬物を使用等した場合を一部執行猶予の対象として広く認めています。これは,薬物を使用して薬物依存の強い人は,一部執行猶予を認めて社会内での治療等を行うことが有用であるが,これらの人は前科を有していることが多く,刑法と対象を同じにすると,対象者が少なくなってしまうことが理由とされています。 

 また,一部執行猶予を認めてもらうためには,今回受ける判決で3年以下の懲役または禁錮となることが必要である点は,刑法の場合と同様です。 

 そして,上記の場合に必ず一部執行猶予が認められるわけではないことも刑法の場合と同様ですが,考慮内容が若干異なります。具体的には,犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,刑事施設における処遇に引き続き社会内において薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが,再び犯罪をすることを防ぐために必要であり,かつ,相当であると認められる場合に初めて一部執行猶予が認められるとされており,下線部分が加わり,薬物の依存に着目するものとなっています。 

 一部執行猶予が認められる場合には,薬物使用法の場合には,保護観察が必ずつけられます。そのため,刑務所から出られたとしても完全に自由となるわけではなく,保護観察所に定期的に通ったりする必要があります。この点はデメリットと言うこともできます。 

6 弊所にお任せください

 最初に書いた通り,執行猶予となるか刑務所に行くかは,その後の人生を大きく変えてしまいます。依頼する弁護士によって弁護活動が変わるので,どの弁護士に依頼するかによって,結果が変わってしまいます。そのため,弁護士を選ぶことは重要です。 

 また,一部執行猶予を認めてもらうためには,法律に定められた要件を満たすか検討し,一部執行猶予を認めることが相当であることについて裁判官を説得しなければなりません。特に,薬物使用法上の一部執行猶予を求める場合には,薬物離脱に向けた活動を行ったり,それを裁判で立証したりして,裁判官を説得することが必要になってきます。このような活動に関して知識や経験のある弁護士に依頼をすることが重要となります。 

 弊所には,刑事事件の経験が豊富な弁護士が多数在籍しています。どの弁護士も,熱意をもって,一人一人の依頼者のために,全力を尽くしています。 

 あなたの人生にかかわることを任せるのは,どの弁護士でもいいはずはありません。ぜひ弊所の弁護士にご依頼ください。 

桑原 慶 弁護士

明治大学法学部卒業
中央大学法科大学院卒業
2016年弁護士登録

<趣味>

サッカー・漫画を読むこと

<座右の銘>

継続は力なり

<一言>

困っている人の力になりたいと思い、弁護士になりました。トラブルに巻き込まれてしまっても、その影響を最小限に抑え、これまで通りの生活が出来るよう尽力します。