この記事は弁護士國府田豊が執筆しています。
いわゆる外国人事件とは、日本国内で、外国人の方が起こしてしまった刑事事件を言います。
被疑者・被告人が外国人の方であっても、刑事事件の手続きは基本的には日本人の被疑者・被告人と基本的には同じです。
しかし、外国人の方の事件の場合、①言語・文化の違いによる問題点、②在留資格との関係によって生じる入管法(出入国管理及び難民認定法)上の問題点があります。
①言語・文化の違いによる問題点
外国人事件の受任にあたって問題となるのは、やはり言語の違いです。
必要に応じて、通訳人の先生を確保し、接見や打合せ、公判に至るまで刑事手続の最初から最後まで連携をとって活動を行う必要があります。
文化の違いによって、刑事手続が大きく異なる可能性もあります。
日本国内の刑事手続きの流れ・特徴を理解していただけるまで丁寧に説明し、少しでも交流に伴う不安を解消してもらう必要があります。
※日本の刑事弁護に精通している北パブにご依頼いただければ、依頼者の方のご不安を最大限解消できるよう、ご納得いただけるまで懇切丁寧に刑事事件の手続き等のご説明を致します。
②在留資格との関係によって生じる入管法(出入国管理及び難民認定法)上の問題点
さらに、在留資格との関係で問題が生じることもあります。
特に、勾留されている間に被疑者の在留期間が経過してしまう場合には、在留期間の更新等の手続きが必要になります。
また、有罪判決を受けた場合など、刑事裁判の結果次第では、適法な在留資格を有する外国人であっても、入管法の退去強制事由(入管法24条)に該当し、退去強制処分等を受けてしまう可能性があります。
以下は、入管法24条に規定されている退去強制事由です。
対象者 | 該当条項 | 対象となる内容 |
不法入国者 | 1号 | ・有効な旅券を所持せず入国(偽造旅券・有効期限切れ旅券での入国) ・正規の上陸手続を受けずに上陸する目的を有して入国 |
不法上陸者 | 2号 | ・入国審査官の上陸許可を受けずに上陸した者 |
在留資格取消者 | 2号の2 | ・在留許可の取消(22条の4一①②)を受け、出国猶予期間を付与されなかった者 |
2号の3 | ・在留資格の取消(22条の4一⑤)を受け、出国猶予期間を付与されなかった者 | |
在留資格取消者で出国期間経過 | 2号の4 | ・在留資格の取消を受け、出国猶予期間を付与された者で、この猶予期間を経過した者 |
不法入国等の支援者(実行・教唆・幇助) | 3号 | ・他の外国人に不正に在留資格認定証明書・上陸許可・上陸特別許可・在留特別許可を受けさせる目的で、文書・図書の偽変造、虚偽文書・図画作成、およびそれの行使・所持・提供、またはこれらの行為を教唆し、助けた者 |
テロリスト等 | 3号の2 | ・①テロ(公衆等強迫目的の犯罪)行為②テロの予備行為③テロ行為の実行を容易に行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者 |
3号の3 | ・国際約束により本邦へ入国を防止すべきものとされているテロリスト等 | |
不法就労助長行為、教唆、幇助 | 3号の4 | ・次のいずれかの行為を行い、教唆し、助けた者 イ 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせること ロ 外国人に不法就労活動をさせるために自己の支配下に置くこと ハ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあっせんすること ※不法就労活動=(適法な在留者が行う)資格外活動又は(不適法な在留者)不法在留者が行う報酬その他の収入を伴う活動 |
在留カード等の偽変造等 | 3号の5 | ・次のいずれかの行為を行い、教唆し、助けた者 イ 行使目的で、在留カード・特別永住者証明書を偽造・変造、または偽造・変造の在留カード・特別永住者証明書を提供・収受・所持すること ロ 行使目的で、他人名義の在留カード・特別永住者証明書を提供・収受・所持し、または自己名義の在留カード・特別永住者証明書を提供すること ハ 偽造・変造の在留カード・特別永住者証明書または他人名義の在留カード・特別永住者証明書を行使すること ニ 在留カード・特別永住者証明書の偽造・変造の用に供する目的で、器械・原料を準備すること |
専従資格外活動者 | 4号イ | ・資格外活動許可を受けないで、(在留資格以外の)収入を伴う事業運営活動または報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く) |
不法残留者 | 4号ロ | ・在留期間の更新・変更を受けないで在留期間を経過して残留する者 |
人身取引等加害者 | 4号ハ | ・人身取引等を行い、唆し、またはこれを助けた者 |
旅券法違反者 | 4号ニ | ・旅券法上の虚偽申請等に関する罪により刑に処せられた者 |
集団密航の罪違反者 | 4号ホ | ・集団密航等を助長し、援助し、刑に処せられた者(入管法74条ほか) |
非専従資格外活動者 | 4号へ | ・資格外活動を受けないで、在留資格以外の収入を伴う事業運営活動または報酬を受ける活動を行った非専従資格外活動者で、禁錮以上の刑に処せられた者(入管法73条) |
少年法違反者 | 4号ト | ・未成年で、少年法の不定期刑を言い渡すべき場合に、長期3年を超える懲役または禁錮に処された者 ※少年法で、無期刑又は1年を超える定期刑に処せられた場合は4号リに該当 |
規制薬物違反者 | 4号チ | ・麻薬・大麻・覚醒剤等の取締法令違反により有罪判決を受けた者 ※刑の免除、執行猶予も含まれます |
刑罰法令違反者 | 4号リ | ・ニからチまでのほか、無期又は1年を超える懲役もしくは禁錮に処せられた者 ※執行猶予を受けた者を含まず、実刑に処せられた者が対象 |
売春関係者・売春関係業務従事者 | 4号ヌ | ・売春を行った者、その周旋・勧誘・場所の提供を行った者、売春に直接関係がある業務に従事する者(人身取引等により他人の支配下に置かれているものを除く) ※(他の刑罰法令違反者と異なり)判決・逮捕がなくとも、(他の入管法違反と同様に)入管当局の認定で、退去強制事由該当性が判断されます。 |
不法入国幇助者・不法上陸幇助者・在留資格等不正取得幇助者 | 4号ル | ・次に掲げる行為をあおり、唆し、または助けた者 ⑴他の外国人が不法に入国・上陸すること ⑵他の外国人偽りその他不正手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、在留資格等の許可を受けること |
暴力主義的破壊活動者 | 4号オ | 日本政府を暴力で破壊することを企て・主張する者またはその主張する団体を結成・加入する者 |
4号ワ | ・公務員への暴力・公共施設の破壊・工場事業場の安全を脅かすことなどを勧める政党・団体の結成・加入する者 | |
4号カ | ・4号オ・ワに規定する政党・団体の目的達成するため、印刷物・映画・文書図画を作成・頒布・展示する者 | |
利益公安条項該当者 | 4号ヨ | ・4号イからカ以外で、法務大臣が日本の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者 |
別表第一刑罰法令違反者 | 4号の2 | ・別表第一の在留資格(活動類型資格)をもって在留するもので、一定の犯罪により懲役又は禁錮に処せられた者(執行猶予を含みます) ※別表第二(身分類型資格)をもって在留する者は、日本社会との関わりの深さなどから日本国内での更正を期待して、4号の2の退去強制対象から除外されています。 ※詳細はこちら |
国際競技会等関連不法行為 | 4号の3 | ・短期滞在者で、国際競技会等の経過・結果に関連して、又は妨害目的で、不法に殺傷・暴行・脅迫・建造物損壊をした者(フーリガンへの対策) |
虚偽届出罪等違反者 | 4号の4 | ・中長期在留者で、住所地届出義務違反・虚偽申出・在留カード更新義務違反等により懲役に処せられた者 |
仮上陸条件違反者 | 5号 | ・仮上陸許可に際して付した住居・行動範囲・呼出に対する出頭義務その他の条件に違反した者 |
退去命令違反者 | 5号の2 | ・上陸を許可されず退去命令を受けた者で遅滞なく退去しない者 |
特例上陸許可にかかる不法在留者 | 6号 | ・特例上陸許可(寄港地上陸許可ほか)により認められた上陸期間を超えて在留する者 |
船舶観光上陸許可逃亡者 | 6号の2 | ・船舶観光上陸許可により上陸し、出港するまでの間に帰船することなく逃亡した者 |
数次船舶観光上陸許可取消に係る出国期間の経過 | 6号の3 | ・数次船舶観光上陸許可の取消による出国期間の指定を受けた者で、その期間内に出国しない者 |
数次乗員上陸許可取消に係る出国期間の経過 | 6号の4 | ・数次乗員上陸許可の取消による出国期間の指定を受けた者で、その期間内に出国しない者 |
上陸を経ない不法在留者 | 7号 | ・出生・国籍離脱等で上陸手続を経ないで在留することとなる外国人が60日を過ぎても、在留資格未取得で残留する者 |
出国命令超過不法在留者 | 8号 | ・出国命令に付された出国期限を経過して在留する者 |
出国命令取消者 | 9号 | ・出国命令に付された行動範囲を逸脱等して出国命令を取消された者 |
難民認定取消者 | 10号 | ・不正手段で難民認定を受けた者や難民欠格事由に該当するなど難民認定を取消された者 |
退去強制を避けるためには、不起訴処分を獲得することが重要です。
犯罪を行った場合に在留資格を喪失するのは、裁判で有罪となり一定の刑に処される場合や身柄を拘束され、在留期間の更新ができずに超過してしまう場合です。
※北パブにご依頼いただければ、不起訴処分を獲得して実刑を回避する、有罪でも退去強制事由とならない内容の判決を獲得する、在留期間の更新ができるように早期に身柄を解放すること等を目指して活動を行います。
退去強制事由に該当したとしても、日本人と結婚している場合や日本で出生した小学校高学年以上の子どもがいる事例などであれば、「在留特別許可」(入管法50条)が付与される場合があります。
また、被疑者・被告人の方が本国で政治的な弾圧を受けている場合には、「難民認定」を受けることが可能な場合もあります。
※北パブにご依頼いただければ、刑事事件以外にも、難民認定の申請のサポートもすることができる可能性があります。
※入管法50条:法務大臣の裁決の特例
第五十条 法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
一 永住許可を受けているとき。
二 かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2 略。
3 略
4 略
※参考:在留特別許可に係るガイドライン(法務省入国管理局・平成21年7月改訂)
1 特に考慮される有利な事情
⑴ 当該外国人が,日本人の子又は特別永住者の子であること
⑵ 当該外国人が,日本人又は特別永住者との間に出生した実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって,次のいずれにも該当すること
ア 当該実子が未成年かつ未婚であること
イ 当該外国人が当該実子の親権を現に有していること
ウ 当該外国人が当該実子を現に本邦において相当期間同居の上,監護及び養育していること
⑶ 当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって,次のいずれにも該当すること
ア 夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること
イ 夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること
⑷ 当該外国人が,本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し,当該実子を監護及び養育していること
⑸ 当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としていること,又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること
2 その他の有利な事情
⑴ 当該外国人が,不法滞在者であることを申告するため,自ら地方入国管理官署に出頭したこと
⑵ 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格(注参照)で在留している者と婚姻が法的に成立している場合であって,前記1の(3)のア及びイに該当すること
⑶ 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格で在留している実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって,前記1の(2)のアないしウのいずれにも該当すること
⑷ 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格で在留している者の扶養を受けている未成年・未婚の実子であること
⑸ 当該外国人が,本邦での滞在期間が長期間に及び,本邦への定着性が認められること
⑹ その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること
●あなたにとって不利な事情
1 特に考慮される不利な事情
⑴ 重大犯罪等により刑に処せられたことがあること
<例>
・ 凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがあること
・ 違法薬物及びけん銃等,いわゆる社会悪物品の密輸入・売買により刑に処せられたことがあること
⑵ 出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること
<例>
・ 法就労助長罪,集団密航に係る罪,旅券等の不正受交付等の罪などにより刑に処せられたことがあること
・ 不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがあること
・ 自ら売春を行い,あるいは他人に売春を行わせる等,本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行ったことがあること
・ 人身取引等,人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること
2 その他の不利な事情
⑴ 船舶による密航,若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと
⑵ 過去に退去強制手続を受けたことがあること
⑶ その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること
⑷ その他在留状況に問題があること
<例>
・ 犯罪組織の構成員であること
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早稲田大学大学院法務研究科修了
2021年弁護士登録
ボート、ドライブ、カラオケ、料理
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