2004年に当事務所が設立されて以降、2014年末までの約10年間で当事務所の所属弁護士が当事務所所属中に無罪判決を獲得した刑事事件は合計12件あります。審級ごとの内訳は下記のとおりです。
上告審(最高裁) 2件
控訴審(高裁) 1件
一審(地裁・簡裁) 8件
再審(地裁) 1件
ご存知の方が多いかもしれませんが、日本の刑事司法においては、検察官が起訴した事件の99%以上は有罪だと言われています。経験年数数十年でも無罪判決を獲得したことがない弁護士が大多数ですから、設立から10年の間に12件の無罪判決というのは、決して少ない数ではありません。
無罪判決が出るような事件は、誰が担当しても無罪となるかというと、そうではありません。なぜ、無罪判決が簡単に出ないのか。それは、そもそも検察官が起訴した事件の99%以上が有罪とされる理由について考えてみる必要があります。検察官は、捜査を通じて集めた膨大な証拠に基づき、有罪にできるかどうかを十分に検討します。その上で、有罪にできると判断した事件について、起訴するのです。本来は、裁判において有罪か否かを吟味すべきとは思いますが、少なくとも日本の刑事司法においては、このような運用がなされている結果として、有罪率99%以上と言われているのです。
次に、では、なぜ、検察官がそのように吟味したにも関わらず、無罪判決が出るのか。それは色々な理由が考えられます。一つは、検察官は、いかに公益の代表者とはいえ、捜査機関であり中立的な立場にあるわけではないため、思い込み等により証拠の意味を取り違えている、という可能性があります。その他にも、検察官による吟味が不十分な場合、違法な捜査が行われたことによってせっかく集めた証拠を裁判所が採用できない場合、弁護人が捜査機関が発見していない有利な証人や証拠を発見した場合等様々な理由が考えられます。ただし、先ほどお話ししたとおり、基本的には検察官が膨大な証拠を十分に吟味し、「有罪」と判断していることから、その中から無罪である根拠を発見するのは、決して簡単ではありません。
では、無罪である根拠を発見し、その根拠を適切な証拠の形で提出すると共に効果的な主張をして、裁判官や裁判員に対し、無罪であると理解してもらうためにはどうすればよいのでしょうか。
そのためには、刑事訴訟実務ついての知識・経験、刑法や刑事訴訟法等関係法令の調査と理解、裁判例の調査、証拠の検討や事件現場における検証、被疑者・被告人の方々との打合せ、裁判における証人尋問や弁論などの技術等、様々な弁護人の能力及び努力の集積が必要です。
当事務所は、刑事対応型公設事務所として、各所属弁護士が様々な刑事事件を多数取り扱ってきました。他方で、弁護士会での研修、私的団体における刑事弁護実務の勉強会等にも積極的に参加すると共に、事務所内においても刑事弁護実務の勉強会を定期的に行っています。そして、実際に刑事事件を担当する場合、時には1人ではなく2人以上の弁護士が共同して弁護活動を行うなどし、独善に陥ることなく、また、複雑な事案等では役割分担をすることなどを通じて、被疑者・被告人の方々にとって最善の弁護活動となるよう努力して参りました。
無罪判決は、1つには事件とのめぐり合わせではありますが、そのめぐり合った無罪となるべき事件に対し、最大限の弁護活動を行ってきたことが、12件という件数につながっているものと自負しています。
2015年5月8日 3:00 PM カテゴリー: 事例報告